よく噛もう!賢い子を育てる“お口”の話。
皆さんは、幼い時から「たくさん噛みましょう」と教わってきたのではないでしょうか。
では、なぜ噛むとよいのでしょう。その理由をお子さんに伝えることができますか?
この記事では、20年近くライター・編集者として多くの方を取材してきた、食育イントラクターの資格も持つ筆者が、「噛む」ことのメリットなど“お口”にまつわる話をお伝えします。
噛むことの大切さから、噛むことを育てる食材、そして、できるだけ避けたいむし歯の話まで…。
お忙しい皆さんの育児の合間に少しでも参考にしていただければと思います。
◆「なぜ?」と聞かれたらこう答える!“賢い子”を育てる【食育】Q&A
目次
【噛むメリット】味覚や言葉、脳の発達を助けます!
そもそも、なぜよく噛まないといけないのでしょう。
日本咀嚼学会(https://www.sosyaku.jp/)が提案しているキャッチフレーズ『ひみこの歯がいーぜ』を紹介します。
その昔、女王である卑弥呼がいた時代の食べ物は固いものばかりで、たくさん噛んで食事をしたと考えられ、噛む回数はなんと現代の6倍以上だったと言われています。
『ひみこの歯がいーぜ』
- 『ひ』肥満予防
よく噛むと満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを抑えてくれます。 - 『み』味覚の発達
素材本来の風味を感じ、ゆっくりと味わうことで味覚の発達を促します。 - 『こ』言葉の発達
よく噛んで口まわりの筋肉を使うことで言葉を正しく発音できるようになり、顔の表情も豊かになります。 - 『の』脳の発達
脳の血流がよくなり、記憶や学習能力の向上につながります。 - 『は』歯の病気を予防
唾液の分泌がよくなり、むし歯や歯周病のリスクを抑えられます。 - 『が』がんの予防
唾液に含まれる酵素「ペルオキシターゼ」に発がん性を抑える働きがあると言われています。 - 『い』胃腸の働きを促進
食べ物をかみ砕いてから飲み込むと、胃腸への負担が軽減されて消化を助けます。 - 『ぜ』全身の体力向上
噛みしめることで全身に力が入り、体力や集中力を養うことにつながります。
よく噛むメリットはこんなにもたくさんありますので、ご家庭で話題にしていただければ幸いです。
ついついお子さんには「早く食べて」と言ってしまいがち…。でも、噛むことは味覚や脳の発達、言葉の発達、歯やその他の病気予防などにもつながります。
ダラダラ食べるのはよくありませんが、しっかり噛んで食べることはメリットがありますので、早食いを促進しすぎないように気をつけるのも大切だと思います。
「もっとよく噛まないと!」とお子さんに思ってもらうためにも、噛むことのよさは「ひみこの歯がいーぜ」で憶えてくださいね。
【おすすめ食材】“噛む”を育てる食材を!
一口で噛む回数は「30回」が目標とされていますが、なかなか難しいですよね…。ですので、よく噛むためには食材選びを少し工夫してはいかがでしょう。
“噛む”を育てる食材選びのポイントは?
✓『噛みごたえのあるもの』を選ぶ!
そうなんです。とにかく噛みごたえのあるものを選べばOKなんです。固いもの、弾力性のある食材を意識して選びましょう。
“噛みごたえ”のある食材は?
✓ごぼう・だいこん・にんじん・小魚・りんご・さつまいも・じゃがいも・キャベツなど
特に小魚やりんごなどは、おやつにもできて栄養もあるのでおすすめです。
さつまいもも、ふかしたり焼いたりするだけでおやつにできますよね。むし歯の原因になる砂糖を使うのではなく、天然の甘みを活かしたおやつとして取り入れてみてはいかがでしょう。
食材が持つ本来の美味しさをいただくという、子どもの“味覚を育てる”という意味でも有効に働くと思います。
また、キャベツやにんじんなどのシャキシャキした歯ごたえのものは、歯についた食べカスも取ってくれるとか。サラダやスープなどにも使いやすいですよね。
【調理の見直し】子どもの“早食い”や“まる飲み”が気になる方へ
お子さんがよく食べることはよいことではあるものの、食べ方が気になる親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
食べるものが離乳食から幼児食にかわっても、乳歯が生えそろうまでは食べにくいものがあり、噛む力もまだまだ成長途中。今一度、食材の切り方見直してみましょう。
早食いになりやすい原因は?
✓食材の切り方が小さすぎるかも!?
ご飯があまり噛まずに飲み込めてしまう状態では早食いになりやすく、噛まないので満足感も得られません。
まずは、お子さんの口の状態に合わせた大きさや固さにすること。
実は筆者も、子どもが1~2歳頃にカボチャを小さく切りすぎていました。カボチャの煮物をお弁当に入れた時、保育園の先生から「もう少し大きく切るのがいいかも…」とアドバイスを受けたことがあります。
そして、お子さんには「よく噛もうね」の声掛けを!
大人の食べている様子を見せたり、「カリカリするね」など噛んだ時の音を感じさせたりすることも噛む練習につながります。
まる飲みになりやすい原因は?
✓食材が固すぎるかも!?
食べるものが固すぎるとうまく噛めませんよね。子どもはまる飲みするか口から出すしかありません。お子さんの様子を見ながら食材の固さを見直してくださいね。
3歳頃に乳歯(上下合わせて20本)が生えそろうと噛み合わせが安定してきます。
それに伴ってあごの筋力がついてくると、ある程度の固さのものや繊維のあるものもしっかり噛んで食べられるようになります。
以下に、1~3歳頃のお口の成長の目安を紹介します。
◎1歳頃(第一乳臼歯が生える頃)
指でラクにつぶせる柔らかさのものを1cm角のサイコロ状や棒状に切ったり、厚めのいちょう切りにします。前歯を使って一口の量を「かじり取る」ことで噛む練習をします。
◎3歳頃(第二乳臼歯が生える頃)
大人よりもまだ柔らかさが必要です。食品の固さによって薄く切ったり、繊維を切るようにしたり、色々な形や大きさに切ることで噛む練習ができるようにします。
【噛めるお口づくりのコツ】食べ物をうまく飲み込むには“姿勢”も大切!
以前、歯科医の先生に取材をした時に伺った印象的な話があります。
食べる時に舌をうまく使うことで、まわりの筋肉も上手に使って食べ物を「ゴックン」と飲み込めるようになるとか。
舌は話す時にも使う大切な器官です。姿勢に気をつけてきちんと噛んで飲み込むことで、食べ物を身体に摂り入れたり、話すことも上手になっていくのではないかとおっしゃられていました。
つまり、姿勢が悪いまま食べる癖がついてしまうと舌がうまく使えなくなり、食べ物を飲み込むのも下手になり、話す能力も高まらない可能性があるということです。
お子さんには、食べ物をしっかり摂って成長してほしいですよね。そして、美しく話せるようにもなってほしいと思うのが親心。
猫背のような姿勢で食べている様子は見た目としてもよろしくないですし、美しい姿勢を保って食べることの大きなメリットをぜひ憶えていただければと思います!
食べ物をうまく飲み込むポイントは?
✓できるだけ“キレイな姿勢”で!
【むし歯を防ぐおやつのコツ】量よりも、回数やダラダラ食べないことが重要!
ここでひとつ、気になる“おやつ”のお話を。
子どもに甘いものをそれほど与えていなくても、「知らないうちにむし歯になってしまった」とがっくりされる親御さんもいらっしゃるようです。
でも、なってしまったものは仕方ない…。これからのことを考えましょう!
では、むし歯になりやすい原因とはなんでしょうか。
むし歯の原因になりやすいのは、糖質の量より「摂取頻度」や「時間」だそうです。
飲食後、口の中では細菌の生み出す酸や飲食物の酸によって歯の成分が溶け出し、その後に時間をかけて唾液が成分をもとに戻していきます。溶かす力が戻す力を上回る時間が長く続くとむし歯になってしまうのです。
ですので、少しの量でも口の中に甘いものがあり続けると唾液が歯を修復する時間が取れなくなり、むし歯になりやすくなってしまうのだとか。
ゆえに、ダラダラとおやつを食べたり飲んだりするのではなく、できるだけ短時間で食べる。そして頻度を減らすことが大切なのです。
むし歯を防ぐおやつの食べ方は?
✓おやつの回数を減らし、ダラダラ食べない!
なお、おやつに「キシリトール」や「フッ素」を配合したガムなどを取り入れるのもよいそうです。よく噛むことで唾液がたくさん出て、口内環境を整えることができるからです。
その他の注意点
✓意外と糖分の多いものに注意!
スポーツドリンクや乳酸菌飲料にも砂糖がたっぷり入っていることがあります。また、みりんやウスターソース、ケチャップなども糖質の含有量が高いので注意しましょう。
✓ペットボトル症候群に注意!
ジュースやスポーツドリンクなど、糖分を大量に含む清涼飲料水を飲み過ぎると糖分の大量摂取で高血糖になり、高血糖からくる喉の渇きでまた清涼飲料水を飲んでしまいます。
喉が渇いたら、できるだけ水やお茶を飲むようにしましょう。
まとめ
ご飯は姿勢よく、よく噛んで食べれば心も身体もすくすくと成長!
「噛む」ことの大切さを皆さんにお伝えできたでしょうか。
お母さんやお父さん自身も、お子さんと一緒に「噛む」ことを意識して食事をすれば、きっとお子さんも「噛む」習慣が身につくのではないかと思います。
成長していくためにとっても大切な「食」。食べるためには、しっかり“噛む”こと、そして噛める“お口づくり”が大切です。
また、お子さんが一生、自分の歯で食を楽しめるためにも、定期的な歯の検診やフッ素塗布などもお忘れなく。
日本中の、そして世界中の子どもたちが、心も身体もすくすくと育ちますように。